社会福祉法人照治福祉会様

2019.03.18
実績について

2016年度、1年間にわたり導入いただいた社会福祉法人照治福祉会の大谷先生にインタビューをいただきました。

 

チームビルディング研修を知ったきっかけは何でしたか?

 

社会福祉協議会の全国経営者協議会の中の経営青年会の主催するチームビルディング研修の講師としていらしていたのがきっかけです。

 

同じ保育とか、高齢・障がいなど、社会福祉法人の経営幹部が集まる研修でした。実際に研修を受講してみて感じたのは、同じ社会福祉、もしくは児童福祉という目的にコミットした経営者や経営幹部が参加して、同じ想いを持っているけどやり方は別々。

 

価値観も多少のずれや幅がある。そういう人たちがあの日、初めてあそこで会って研修を受けていく中で、お互いに価値観を共有したり、共感したり。そういう小さな経験を積み重ねてひとつの目的に沿ったプログラムを成し遂げるっていう経験をすることで、参加していたグループが一つのチームになるという経験をすることができました。

 

これをうちの組織に置き換えてみた時に、その当時で開園3年目ぐらいだったのかな。法人の中で3番目の施設としてできて、既存の施設から異動した職員、新卒の職員、中途採用の職員がいて、職員のスタートラインも皆まちまちでした。もちろん同じ「保育」というミッションは背負っている。でも経験もやってきた環境も育ってきた環境も違う職員が混在する中で、何かこう、スタートラインを一つにして、同じ時間をかけて、同じ体験をして、同じ経験を共有することでチームとしての一体感や組織力を高められたらいいなと思っていました。

 

それにこの研修は当てはまるんじゃないかなと思って、この研修を園に入れることにしたんです。

 

研修に期待していたことはどんなことでしたか?

 

うちの法人で元々、別の施設で働いていた人っていうのはもちろん法人として今までやってきたものを大きな意味では共有しているんですけれども、実際業務をやっていく中ではそれぞれの施設でやっていることが少しずつ違う部分がある。そのやり方を新しい園に持ち込んで、違うやり方同士を合わせて自分たちのやり方に変えていく。

 

そのために言ってみれば翻訳する作業がそこには必要となるわけで、その翻訳ソフトが無く、みんなバラバラではみんなが理解できる言語にならない。ということは一つのチームになりきれないっていうことが課題として1年、2年続きました。

 

やり始めて1年目は「やり方が違う」っていうのもみんな覚悟のうえで来ているから、なんとか違いを認め合いながら、というか、ごまかしながらやれるんだけれども、それが2年、3年と、この園で積み重ねをしていく中で、その「微妙なズレ」が埋まらないままに、その上にものを積み重ねて行っても、なかなかしっかりしたものが出来上がらない。

 

それであれば一つベースをしっかり揃えて共有しないと組織力は高まらないんじゃないか。ということでみんなが一度に、同じ時間をかけて、同じ課題に取り組むという経験が疑似的に - 仕事でそれができれば一番良いんだけれども、それはなかなか難しいので - チームビルディングの研修というソフトを使って「共通の経験」を提供したいなと思ったということころです。

 

「言語が違うから」っていうだけで片づけてそのまま目を反らしてやってきていても、組む相手が変わるたびにそれが毎回起こるので、いつまでたっても「去年の積み重ねの上に」っていうのがなかなか得られにくい。毎回それぞれに違うバックグラウンドを持った人とチームを組むことになるので、そのたびに「また1から」になるんですよね。

 

元々のベースをしっかり共有したものがあれば、「去年の積み重ねの上に今年」と自然と経験が積み重なっていくと思うんですけど、はじめの土台がずれているとずれているものの上にまた違う組み合わせなので、当然ずれているものが結果として出てきて、それをそのままにしておくと、いくら積み重ねようと思ってもどうしてもそのずれは埋まらない。埋まらないどころか広がっていく。チームメンバーの距離感がパートナーを変えるたびに広がっていく。

 

そういうような感覚があった。例えば0歳児クラスだったら0歳児クラスの保育が積み重なっていかない。そういう現状が見えたので、「困ったな」ということです。

 

例えばおむつを替える手順、ミルクの与え方、食事の提供の仕方、じゃあどのスプーンを使うか、どの順番で食べるか、どうやってどの位置に保育者が座って子どもと関わるのか。

 

そういう具体的な行動ひとつひとつのずれについて、やり方はもちろんそれぞれにあってよいんですけど、その根幹にある「なぜそうするのか」っていう部分。その部分に若干のずれがあると、それが、人が変わるたびに違っていく。

 

どんどんずれていく。AさんとBさんで和解しても、AさんとCさんが組んだら新たなズレが出て。AさんとCさんの間で合意がとれたとしてもBさんとCさんの間ではとんでもない差になっている。そういう「ずれがずれを生む」っていう感覚。みんな「こういうこと大切にしたいよね」は頭でわかっている。でもそれに至るまでの方法がバラバラなのでそこが「なぜそうするのか」の問いに対する答えがみんなバラバラでした。

 

中島と水田で研修に入らせていただきましたが、
チームビルディング研修やファシリテーターの印象を教えてください。

 

現状を把握するための、情報の引き出し方が自然で上手いな、という印象がまずありました。特に皆に向けて、カタい話はほとんどされずに、でも研修や雑談の中で、うまく職員たちから情報を引き出しながら、キーマンを見つけたり、職員への質問だったり、話の振り方でどんどん本音を引き出していって、うちの問題、課題っていうのを自然とそれぞれの職員に気づかせるっていうか、考えさせるような。そういうきっかけを自然と与えてくれているなと感じました。

 

研修を受けた後の先生一人ひとりや
クラスとしての変化はいかがでしたか?

 

まずは、中途採用の職員が発言するようになりましたね。そして非常勤採用の職員も意見を言うようになった。それが一番大きな嬉しい変化ですね。中途採用の職員っていうのはやっぱり元々いる職員に遠慮しますから。自分は後から来たという思いがどうしてもあるじゃないですか?でも遠慮はしているけど経験はあるから、それなりの自分のスタイルを持っているし、プライドもある。

 

だから遠慮はしているけど、言うことを聞かなくちゃというわけでもない。かといって自分の意見を明示することもないので、要は分かっていて、やってくれているようでいながら共有共感っていうチームに必要な根幹の部分がなかなか醸成されにくい。

 

そういう状態だったと思うんですね。でもそれが、この研修を入れることで、初めてみんなが何らかの課題に、同じ時に同じ時間をかけて取り組めるよう進めていっていただける。その体験においてはみんな平等なわけですよね。

 

一年目の職員も、前からこの職場にいる職員も、中途で採用された人もみんながヨーイドンで一斉にスタートしたプログラムで、そこに同じだけの時間と、同じだけのパワーをかけて参加している。そこでは自然と対等で平等になりますよね。

 

そしてそれぞれに自信が持てて、また皆が持ち寄ることで、チームとして課題をクリアし自信を育てていくようなことをファシリテーターがうまく誘導してくれているので、チームメンバーにはなんの引け目も優越感もなく、皆が同じ状態、フラットな状態で取り組める。その点がすごく良かったんだと思っています。

 

職場での毎日の業務だと利害関係が表に立ちすぎてパワーや発言力、経験年数だとか。そういうものがどうしてもついて回る。だからいわゆるOJTではこれは得られないものだと思うんです。全く違うプログラムを導入することで、直接仕事と関係のないプログラムを共有して取り組むことで、お互いが文字通りフラットに、丸裸の状態から皆が集まってやれるっていう、そういうメリットがこのプログラムを入れることで得られる一番大きなものですよね。

 

中途の職員で経験も豊富な、力を持っている先生なはずなのに、なかなか組織、あるいは法人やこの施設への参加が弱いかなと思われる先生たちがいたんですね。どっちかというと孤立しがち、または中途や非常勤同士でグループをつくりがちな人たちですよね。その人が積極的に「この園の為に」とか、「クラス全体の動き」とかあるいは「乳児幼児っていうチーム間での連携」だとか。

 

そういうことに少し参加し始めた。例えば色んな行事の準備をするときの発言の回数だとか、発言の内容だとか、そういうことに大きな変化が見られてきたなと感じています。

 

研修を受けたことでご自分が、
もしくは先生たちが楽になったことはどんなことですか?

 

皆がいろんな経験をしていきているけれども、その経験は皆違いますよね。その経験が違っているというのはもちろん分かっているけど、「違っていていいんだ」ということ。そして自分たちでその違いを力に変えていけばいいんだっていう前向きな思考。違う者同士が合わさって新しいものを生むことへの抵抗が無くなったと感じています。

 

研修の中でいくつか課題が出るわけですけど、その課題を達成するために、普段リードをしている職員の意見がまず出て、それに基づいて取り組んでみるんだけど、必ずしもそれでうまくいくことばかりではないですよね。そこには色んな人の色んな知恵と経験を活かさないと達成できないようなプログラムになっている。1人の考えや力ではどうしようもないものがほとんど。

 

そういう中で「他者を受け入れる」「他者の言うことに耳を傾ける」ということが自然とできるようになった。違いから新しい価値を生み出すっていう経験を通して、「人の意見を聴こう」とか「私も意見を言ってみよう」とか言う部分でのハードルはすごく低くなったんじゃないかなと思います。会議でも1年目の職員が「ちょっといいですか?」と言って、発言してくるんですよね、

 

今は。「私はこう思います」というようなことを言うので、それが嬉しい驚きというか。良かったなとすごく思っています。発言することに対するプレッシャーとか「こんなこと言ったらあかんのではないか」とか「こんなこと言ってもどうせ」とか。そういうのが減りましたね。その部分でみんな気持ちが楽になって「言ってみよう」とか「やってみよう」とか「聞いてみよう」とかそういう意識が芽生えていますよね。見えない壁が少し取っ払われてきたなと感じています。

 

 

最後に、先生一人ひとりに対して
「こんな関係の中で働いてほしい」という想いを教えてください。

 

やっぱり人はどこまで行ってもそれぞれ違うので、違う人たちが集まって一つの集団をなして、その中にチームができて、色んな関わりが生まれていくわけですよね。そこで違うことが何かを生み出す力になるって信じられる、そんな組織が良いなと。

 

そのために、それぞれの違いをうまく組み合わせられるような関係でいてほしいなと。皆が皆、同じことを同じようにできるはずもないし、する必要もないと思うんですよね。

 

みんながそれぞれに違った力を持っていて、違ったバックグラウンドを持っているわけです。それを惜しみなく持ち寄ることで、そこから新しい関係をつくり、価値を生み出していく。それが続けられる。そういう意味では違った人がいればいるほど新しいものが生まれる可能性がある。そういうことを楽しいと思えるような組織であってほしい。

 

同じ考えの人と同じことを話していたら話すことが無くなるはずなんですよ。違うとそれが批判とか批評に陥りがちなんだけど、そうじゃなくて違うものを組み合わせて、あたかもパズルのようにパーツを使って新しいものを生み出す。同じパーツだけだったらあんまり発展性ってないじゃないですか。パズルでも同じパーツばっかりだったらなにも面白くない。

 

何の楽しみもない。複雑なジグソーパズルはやりごたえも楽しみも、できあがったときの達成感も高い。それと同じことがチームにも言えるんじゃないかな。違うユニークなパーツがあればあるほど、またそういった人材が集まれば集まるほどやりごたえのある、完成した時の達成感も高いチームになりうるんじゃないかなと思う。それを楽しむ、全てを許容できる、そんな関係の中で働いでほしいなと思います。