【教えて!園長】vol.7 こどもの王国保育園 「菊地奈津美さん」(ちょびちゃん)

2020.01.09
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【教えて!園長】とは、私たちが素敵だと思う園長先生にインタビューをさせていただき、園の取組みを紹介する企画です。

本日は、こどもの王国保育園の菊地奈津美先生にお話を伺いました。

 

(インタビュアー)菊地先生、本日はよろしくお願いいたします。

よろしくお願いします。

 

まず初めに菊地先生の保育理念や方針について教えてください。

「自分で考え行動して責任を持つ人を育てる」です。

最初に話していたのは、「AIが入ってきたり多国籍の方が増えてきたりと時代が変わっている。教育も変わっていかなくてはいけない部分がたくさんある。先生に言われたからとか誰かがこうしたからなどではなく、自分の人生をきちんと自分で歩ける人が良いよね。」ということでした。それを伝えていける場を作ろうとなった時に、今の東池袋園のオーナーから「ここを使って何かやりなよ。」と言っていただいたことを機に、待機児童問題や幼児教育の重要性、理事が過去に幼稚園をやっていたことなどから保育園をつくることになりました。その時の話を言葉にしたのが、「自分で考え行動して責任を持つ人を育てる」です。そこから我々保育者はどのように子どもに接するかを考え、「“8つの大切”をポイントとしてやっていこう」となりました。

 

-この“8つの大切”から強いて挙げるとするならば、どれを1番に伝えたいですか?

「実体験して学ぶことが大事」ということですね。今は“失敗をさせないように”がとても多いと感じています。成功も失敗も含めてその子の学びになって体験になるという所が根底としてあって、「大人が教えすぎない」「子ども達同士で話し合う」「自分で決める」など、体験するというのがベースにあってやっている。そこが1番のポイントです。

 

うちは企業主導型なので、保護者の方と直接契約しています。うちに入れたくて来てくださっているので、保護者には理念については強くお伝えしています。
例えば、安全管理の面においても「怪我をさせないように、させないように」としている園がとても多いと感じています。

もちろんうちでも大きな怪我はさせたくありませんが、少し頭をゴツンとするくらいであればして、「痛かったから次は気を付けてね」と伝えます。また、「先生、ここを登って良いですか?」と聞くのではなく、自分がどのくらい能力があるのかを見極めたり、自分で自分の身を守ったりする力を育てた方が良いと考えています。

ですから、「少し転んで頭をゴツンするかなという所を“やめなさい”と守ることは出来るけれど、園の外に出たら危険なことはたくさんあるので、敢えて見守るかせめてマットを敷くぐらいにしますので、もしかすると最初は怪我が多いかもしれません。」と親御さん達には伝えています。

それが分かってくると、身のこなしや危険を察知したり判断したりする力が育つので、突拍子もない所から飛び降りたりといったことが無くなります。

 

また、「発表会や運動会も子どものための保育をします」ということもお伝えしています。もちろん、見栄えの良いものを作ることで親御さんに褒められて自信が付くというのもあるので、それを否定しようとは全く思っていません。

ですが、私は「親のため」ではなく、子どもにとってそれが必要であればやりますし、必要でないならやらないという選択を取りたいと考えています。そのため、もしかすると見栄えが良くないものもあるかもしれませんし、“表現したいもの”や“こういう力を育てたい”といった保育者の願いという所で保育をしています。

こうした話は保育者にもしますし、お母さま方にもお伝えして理解いただいているので、理念通りにやらせていただいています。

 

この理念を体現するために、実際に取り組んでいることや事例、工夫などがあればお聞かせください。

一つは職員研修の実施です。今年は保育初心者がいるので、「午睡チェック」について触れた後「うちの園で大事にしていること」について伝えました。「うちの園で大事にしていること」については、「“保育の中ではきちんと狙いを持つ”“まずは子どもの気持ちを受け止める”ということ必ずやりましょう」と話しました。

ただ、これに関してはやり方がたくさんありますし、一人ひとりによって違うので、話し合いながら揃えていくしかないと考えています。その中でも「何故その声を掛けたのか」「何故その環境設定をしたのか」は、きちんとした狙いがあれば良い議論になるので、必ず狙いを持ってね」とこまめに伝えています。また、叩くといったいけないことをした時には「最初の一言目は受け止める言葉を掛けましょう」と伝えています。

 

二つ目は“ハグノート”というアプリを活用し、「今日はこんなことをしました」というエピソードと写真をクラスごとに上げて保護者の方に配信しています。

「今日は楽しかったです」だけでなく、「我々保育者がどんなことを思って、どんな育ちをしてほしくてこの活動をしているのか」を保護者の方にも知ってほしいと思っています。時には「今日〇〇が喧嘩をしました。でもこんな育ちがありましたよね。」といったことも入れて、うちの理念ややりたいことを発信しています。これはお母さまだけではなく、おじいさまやおばあさま、単身赴任中のお父さまにも見ていただけるので好評ですし、「先生たちはこんなに細かく見てくれているのね」と感じてくださっています。また、保育者にもただ「ここに遊びに行きました。お花が咲いていました。(終わり)」ではなく、「この子のこういう育ちが〇〇です」と書くことで、きちんと狙いを持ってやることへの意識付けにも役立っています。

職員には「頑張って質の高いものを書こう」と思ってほしいので、毎月“ハグノート大賞”を選び、賞状と推薦本を贈っています。

 

また、ドキュメンテーションのコンテストも実施しています。そこには「事実」「考察」「写真」を入れ、保育指針である「10の姿」「8つの大切」「3つの特長」から、どの部分が育っているのかを選んで記入してもらっています。

このドキュメンテーションも「大賞」を決めているのと保護者の方に見ていただけるように掲示をしています。実際、パッと作れる人もいれば時間を要する人もいるのですが、意識として「こういうことの中に学びがあるよね」というのを前提に頑張ってもらっています。正規職員とパートと「二人で1個出そうよ」という声も聞こえているので、パートの意識が上がることも期待しています。

 

あとは、“ちょびちゃんだより”という職員版の園だよりを作っています。
内容は、コンテスト実施のお知らせや、保護者の方からいただいた「入園理由」などを書いています。

中でも「理念」を繰り返し伝えていくことは重要であると考えています。保育に正解はないのですが、どうしても「間違っている/間違っていない」「甘い/厳しい」という話になりやすいからです。

例えば、「滑り台を下から登るのはアリかナシか」となった時は「下から登ることでこういう力が育つから良いと思う」「怪我をしてから“こういう時はやめた方が良いよね”という話し合いが出来れば良い」「ルールだから上からでないと駄目」といった保育者それぞれの狙いがあれば良いのです。そして「園としてどうするか」となった時に、理念に立ち返って「うちとしてはこういう人を育てたいからこうするのが良い」という話をしていくことが大事だと考えています。

 

-繰り返し伝えるからこそ、理念に立ち返って考えられるのですね。

東日本橋園は新園だったので、職員からは「じゃあ、王国らしいって何なの?」「どうなの?」と答えを求める発言がありました。そこで、“ちょびちゃんだより”には「“絵具を顔まで塗ったから王国らしい”ではない。探求し続ける姿の方がよほど王国らしいよね」といったことを書きました。また、月に1度職員会議を実施しているのですが、そのうちの15分を私のミニ研修にしています。あとは隔週でリーダーミーティングとサブリーダーミーティングをやっていて、そこに園長先生のミニ研修を入れ、理念の話や声掛けの仕方について話し合うようしています。

 

-テーマは園長ご自身で考えるのですか?

はい、そうです。その時に職員に必要だと思うことをやってもらっています。時々、私が「この本は使えるのでは?」と思ったものを贈るなどはしていますが。

開園して一年目なので、本人たちが「これ」と思うものをやってもらうようにしています。ただ、「感染症についてやりたいです」など、どうしても目先のことに偏る時があり、「そういうことではないよ」と伝えることもありますが、でもそれも今は大事かなと。

職員には若い人や新しい人も多いので、日々を回すための知識が必要ということもありますし。「ゆくゆくは考え方や関わり方、保育の理念について出来るようになると良いね」ということも伝えています。

 

職員に対する職場改善や働きやすくするための工夫などを是非教えてください。

職員の頭の中をシェアしてもらっています。職員会議では、クラスの話や必要なことを話すだけでなく、「良かったこと」「頑張ったこと」「課題」「問題点」「今後やってみること」なども話してもらいます。

例えば、「今週は掃除の〇〇が気になるからちょっとやりたいと思っています」だとか「保護者対応をこうしたいと思っています」など。そうすることで「何であの人、掃除ばかりしているのかしら」ではなく「そう言えば今週、掃除を頑張りたいと言っていたな」といった連携が起きやすくなります。

あとは良かったことを必ず言ってもらうようにしています。というのもどうしてもできないことに目が向きがちだからです。「この人のこういう所、頑張っていて良かったよね」と職員から言ってもらうのと園長から一言褒め言葉を添えてフィードバックするようにしています。ただ、“一言褒める”というのをルール化してやってみたものの、人が変わるとポイントがずれていたり、感想になっていたりと難しさを感じています。

また、職員の誕生日には色紙にメッセージを書いて子どもの前や会議などでお祝いしています。保護者の方の誕生日にもメッセージカードを書いて渡しています。

 

業務改善をする上で、工夫されていることはありますか?

“ピンクのうさぎちゃん”のようなことはしないようにしています。というのも、ピンクのうさぎを見たことはないですし、2足歩行をしていないからです。であれば、本物の季節感のあるものを飾れば良いと思います。子どもの絵についても“一人につきひとつ飾る”ということはしていません。なぜなら「やらない」と言った子に対して「お母さんが悲しむからやって」とやらせることになりかねないからです。大人でも人前で歌うのが好きな人がいれば、絶対に歌いたくないという人もいますよね。それと同じで絵や他のことについてもたくさんやりたい子がいれば絶対にやりたくない子もいるので、“一人につきひとつ飾る”と決めずにやっています。

 

他に人間関係やコミュニケーションを向上させるためにやっていることがあれば教えてください。

年に3,4回、外部に入ってもらって、チームビルディングのようなことをやっています。
課題について立ち止まって考えられたり、客観的に整理してもらえたり、将来のビジョンが考えられたりするので、職員にとっても私達にとっても良いと感じています。園は割と閉じがちなので、もっと周りの力を借りれば良いと思っています。

あとは、年に2回ずつパパ会やママ会をやっています。保護者同士のコミュニケーションになりますし、我々との信頼関係も深められるのでとても良いです。

 

-本日は多岐に渡る貴重なお話を聴かせていただき、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

 

【園情報】
こどもの王国保育園西池袋園
東京都豊島区西池袋4ー8ー20
定 員:20人
職員数:園長、副園長、調理員1名、事務員1名、正規職員4名、パート8名
HP:http://childkingdom.ed.jp/