【教えて!園長】vol.4 LIFE SCHOOL 桐ケ丘 こどものもり「中嶋雄一郎さん」

2019.07.04
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【教えて!園長】とは、私たちが素敵だと思う園長先生にインタビューをさせていただき、園の取組みを紹介する企画です。

本日は、社会福祉法人 つぼみ会 LIFE SCHOOL 桐ケ丘 こどものもりの中嶋さんにお話を伺いました。

(インタビュアー)中嶋さん、本日はよろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

 

保育方針に、「子どものチカラを信じて、引き出す」とあり、中嶋さんの言葉の中に、「子育て」するのではなく、ひとりひとりの人間の“生きる”に共感していく」とありますが、いつ頃からこのようなお考えを持たれて、実践されているのでしょうか?

これを考えたのが7年程前になります。しかし、その時から変わってきている部分があるなと感じています。
普通、法人理念は変わらないことが多いかと思いますし、変わらないことも大事だと思います。
でも時間の経過と共に、自分の考えがブラッシュアップされてきているなと感じています。

法人内でも職員には、保育理念を共通言語として言えるように取り組んでもらっているのですが、大事なことは、自分たちがどういう保育をしようとしているのかを、ちゃんと自分の言葉で説明できることです。
もちろん、本質は変わりませんが、私なりにこの理念を咀嚼して、例えばですが、漢字二文字くらいで表せられないかということを考えはじめているところです。

 

保育理念の中に“世界のどこでも豊かに生活できる”という言葉がありますが、これについて教えてください。

近年、人もお金も物もグローバル化されて、さらに国が観光立国を標榜していることもあり様々な国の人々が日本を訪れるようになりました。
もしくは、逆に今後人口が減っていくこともあり日本から外国に出ていくパターンも増えていくことになると思います。
一神教の国では言葉というものが非常に厳密であり「責任をもって自分の言葉で意思を伝えられる」ことが大事になってくると考えています。
逆にあまり言葉を信用していないことの証拠でもあるのですが。

ただ、さらに時間が経って本当の多様性の意味をいろいろ考えたとき、「べつに伝えなくてもいいし、そういう自由もあるのではないか」と思うようにもなりました。だから、この世界というのは「カントリー」という意味だけでなく、「自分の世界」という意味も含まれていると考えています。

 

理念や方針を体現するために、実際に取り組んでいることを教えてください。

シンプルに、保育とは「ひとりの人とコミュニケーションが取れるか」ということなので、保育室で子どもたちが「自分たちの空間だ」「自分たちの場所だ」という意識で生活しているところに、大人が一緒にいる、共有するというのが一番大事かなと思っています。

乳児は「育児担当制」なのですが、排泄と食事と着替えに関しては同じ担当者がやることになっています。
子どもにとっては「同じ人がいる」という安心感もありますし、大人も一人ひとりの特徴や発達に合わせて過剰にならずに必要な手助けをしていく。
同士が一緒に協同することによって、子ども自身が「自分でできた」ということに繋がっていくのかなと思います。

食事も最初は大人が手を貸しているのだけど、子どもからするといつの間にか「自分でできちゃった」となっていきます。
ほとんど食べさせてもらっているのだけど、自分の意志でできたところで、子どもたち一人ひとりに合わせて大人が一緒に。
それを「協同する」というのですが、大人がやってあげているのではなく、相互に一緒にやっているということです。

 

いつも最初に話すことがあって、子どもは生まれながらに持っている能力があります。それは自分で寝ることです。
だけど入園してくると家とは違うので、泣き続けたりご飯を口にしなかったり、寝なかったりということがあります。

もちろん、まずはその一人ひとりをしっかりと大人が受け入れることです。ただそういうときに手をかけすぎる(よくあるトントンする行為)と
それがないと寝られなくなる、その大人がいないとできなくなるという風にしてしまうんです。「ほら私がいないと寝られないのね」って。
これがめちゃめちゃモチベーションをもって生まれてきた子どもたちのモチベーションを奪う始まりになっている現状があります。

-私、そうしがちです。

やってしまいますよね。なにかやってあげないと良い保育士ではないのではないかと考えがちです。
でもそれは逆だと考えています。ただし、放任になってしまっていないかという見極めは重要です。

また、子どもたちは大人が思っていることをすごくわかっていて、大人が「私たちがいないとあの子たちはかわいそう」などと思ってしまうと、
子どもはそれに応えるのです。
「小さいからわからないだろう」と思っていても、見透かされてしまいます。大人は言葉でコミュニケーションを取りますが、子どもはそれ以外のものを使ってコミュニケーションがとれるんです。言葉がわからないのではなくて考えていることを感じ取ることが出来るんです。
言葉を獲得するとともにその感覚が失われていくんです。

だから普段から緊張感を持たなければならないと思います。
でもそれを伝えるのはとても難しくもあり使命でもあると思っています。

 

今AIがどんどん普及していますがそういうのはどんどん取り入れていったほうがいいと思います。
AIスピーカーとかありますが、そういう環境が普通であることがいいと思います。
この業界はいち早くAIを取り入れた方がいいのではないかと。

他に大事にしていることとしては、「子どもが自分の生活する部屋で自由であること」です。
自由とは何かはすごく難しく、もちろん先ほど言った、必要のない関わりをしないことも大事ですが、まず自分の手が届くところにはいつでも触っていいものしか置かない。

そのためには、その年齢の発達に合っていることが大事で、例えば1歳の部屋に5,6歳児たちが読むような絵本を置いておくと、読めないし分からないから大人に「わからないから読んで」と頼んでしまう。そうすると大人との依存関係ができてしまうので、ある程度自分で完結できる遊具や、遊びこんでいることが保証されるような空間の設定が必要です。また、その動線も考えないといけません。

絵本がたくさんあることだけでいいという風潮がありますがそこに発達に合わせたという観点がないとダメです。
トイレに行く動線が遊んでいるところに通っていたら、結局その遊びを邪魔することになります。
これらを園長含め、各クラスの担任が考えながら行っています。

 

次に、職場環境づくりにおいて、取り組んでいることを教えてください。

今は保育園業界では当たり前になってきましたが、定時で帰ることは6年前から取り組んでいます。そのためにいろいろな業務を減らしています。
子どもがいない時間に子どもとは全く関係のない作業を全て辞めました。もちろん壁紙等です。

また毎月なにか制作して子どもたちがお持ち帰りするというものがあったのですが、特に2歳児まではほとんど大人が作っていたのでこれもこどもの発達にとっては意味がないと判断しました。最初は保護者から「毎月持って帰ってくるのを楽しみにしていたのに。」との声をいただいていましたが、ご理解をいただきながら省略していきました。

その他にも、行事で使うものも無理して作らず、買えるものは買うようにしています。子どもたちの興味や発達に意味があるかどうかは一度みんなで考えますが、考えると要らないものが結構あったので、それはバッサリとやめました。

 

このように業務を省略して8時間内で終われる量にしていったのですが、元々職員には、「定時に帰る」という概念がありませんでした。
それを改めるために、タイマーを鳴らして主任や園長が全室回って帰すという取り組みを2カ月程前から始めました。

最初は全く癖が付かなかったのですが、今は当たり前になっています。そうすると、今まで終わってからやればいいという意識だったのが、時間内にやろうという意識に変わり、そうすることで工夫が生まれ結果、職員同士で協力して終わらせるようになりました。

また、社内の情報共有は社内ネットワークで行っていますが、会計業務や労務管理などもアプリを導入しています。
どんどん業務省略をしていくこともとても重要です。

さらなる業務簡略化のために、AI化も考えています。いかに業務を省略するかですね。例えば掃除はルンバを使っているのですが、結構がんばってくれていて、掃除機の作業はほぼなくなりました。拭き掃除までやってくれるものもありますがまだ発展途上ですね。
そのうち、ドローンを使って階段掃除や外の窓ふきなどもできるようになるかもしれないですね。

 

また、作業の効率化とは異なりますが、法人のブランディング化を考えていて、セミナーにも参加して勉強しています。
やってみないとまだわからない部分もありますが、これが完成されてくると職員にとっては、楽になるだろうなと思っています。
なぜかというと、自分たちがどの方向に向かって今の仕事をしているのかが明確になると思います。

わかりやすく外部の人たちにはっきり説明することができ、説明することが出来るということは自分の理解度が更に深まるといういいループになります。
時間が必要ですが、重要課題ですね。

 

最後に、職員の関係性やコミュニケーションを向上させるために工夫していることがあれば教えてください。

コミュニケーションツールの1つとして「PCM(プロセスコミュニケーションモデル)」を取り入れています。
これは「人間には6つの色がある」というもので、全員それぞれの色があるのですが、「この色が強い人はこういうタイプだ」という具合です。
園内では、「あなたは〇〇色だからこうだよね。」などと共通言語になっています。これを既存職員はもちろん、新しく加わってくれた職員にも受けてもらっていて、クラス分けの参考にしています。
全国私立保育園連盟 青年会議の横浜大会での分科会があるのでぜひご体感ください。

また、理念を浸透させるために、保育を教えていただいている私の師匠に年間で20回程、各園に来ていただいます。
その先生にお話をしていただいたり、職員との保育に関する質疑応答を、机ではなく、現場で行っていただいています。
これまではその先生がいないと出来なかったことが、自分たちに少しずつ理念や理論はもちろん方法論が落ちてきて、今は自分たちだけである程度出来るようになってきたと感じています。

 

-師匠の先生が訪問され始めてどのくらい経つのですか?

7年程です。今ようやく共通言語として語り合えるようになってきました。
今まで人事考課制度の内容などは全部自分で決めていたのですが、今年からもうやめようと思っています。
各園の園長や主任でいろいろな部、たとえば採用部、保育を考える部、研修を立ち上げる部、あとはIT部をつくって、それぞれ立ち上がりだしたところです。
今年からある程度、僕が出なくても成り立つようにやっていきたいです。

そして、僕自身は新しいことを始めようと思っています。

-それはどのようなことですか?

秘密です(笑)

-(笑)

 

-本日は、貴重なお話を聴かせていただき、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

 

【園情報】
社会福祉法人 つぼみ会 LIFE SCHOOL 桐ケ丘 こどものもり
東京都北区桐ケ丘1-7-17
園長:中嶋雄一郎
定員数:208名
職員数34名(園長 1名/主任 1名/保育士 26名/看護師 1名/栄養士 1名/事務 1名/保育補助 2名/嘱託医 1名)